オリゴ糖と糖尿病との関係について

糖尿病は恐ろしい合併症をもたらす病気ですが、その予防としてオリゴ糖が有効です。オリゴ糖のカロリーは低く、また血糖値にも影響を及ぼさないためです。以下では、その詳しいメカニズムや効果について、研究を紹介しながら解説していきます。

糖尿病について[1]

まずは、糖尿病について簡単に紹介しておきます。糖尿病は、食事によって血糖値が上昇しやすくなり、それが下がりにくくなってしまう病気です。血糖値が高くなってしまうと、血管がもろくなってしまい、詰まりやすくなったり、傷つきやすくなったりします。そうした障害は細い血管が多く存在している腎臓や網膜、またその血管が詰まることでのダメージが大きい神経に特に影響を及ぼしやすく、これにより発生する合併症を「糖尿病性3大合併症」といいます。

糖尿病になってしまう原因は、主に肥満です。糖尿病には大きく分けて2つの種類がありますが、糖尿病患者のほとんどが肥満を原因とする2型糖尿病で、脂肪の蓄積による耐糖能の低下によって発生します。予防のためにはカロリーコントロールや、高血糖を防ぐ食事が必要となります。

オリゴ糖のカロリーは砂糖の約半分

ではここからは、オリゴ糖について紹介しておきます。オリゴ糖と糖尿病との関係を論じる上で重要になってくるのは、オリゴ糖のカロリーでしょう。たしかに、オリゴ糖には糖という言葉がついています。砂糖・ブドウ糖・果糖など、糖尿病患者が摂取を避けるように指導される糖には、枚挙にいとまがありません。ですので、オリゴ糖もこれらの糖と同様に摂取を避けようとするのはごく自然なことでしょう。しかし、これらの糖とオリゴ糖には決定的に異なる点があります。それがカロリーです。

オリゴ糖のカロリーは砂糖の半分ほどしかないのです。先ほど紹介した糖が、1グラムあたり4キロカロリーのエネルギーを持っているのに対して、オリゴ糖は1グラムあたり2キロカロリーしかエネルギーを持っていません。つまり、オリゴ糖はエネルギーとして利用されにくく、太りにくい糖であるとも言えるのです。

この理由は、オリゴ糖の消化のされにくさによります。オリゴ糖の構成している結合は、人間の消化酵素によって切断されません。人間が糖をエネルギーとして利用するためには、二糖類もしくは単糖といった細かな単位にまで分解する必要があるのですが、オリゴ糖はそれができません。そのため、エネルギーとして利用されないのです。2キロカロリーのエネルギーを産生する理由は、腸内細菌によって発酵を受け、その過程で脂肪酸を産生するからで、その脂肪酸がおよそ2キロカロリーのエネルギーに相当するのです。

オリゴ糖が消化されにくいということは、それに加えてもう1つ重要なメリットをもたらします。それは、血糖値の上昇に寄与しないということです。糖尿病患者の場合は血糖値のコントロールが重要になってくるため、そのことが糖を避ける理由にもなります。しかし、人間の消化酵素によって分解されず、代謝の過程で血液中に直接入らないオリゴ糖は、血糖値の上昇には関与していません。ですので、この点においても、オリゴ糖は糖尿病患者にとって有益な成分たりえるということになるのです。

オリゴ糖と糖尿病との関係

オリゴ糖が糖尿病にとって有益な成分であることはなんとなく理解いただけたと思います。しかし、理論の上では有益であっても、実際はどうなのかは不明な点が多いもの。そこでここからは、実際にオリゴ糖が糖尿病にとって有益なのかどうかについて、実際の研究を紹介しながら検討していきたいと思います。

動物を対象とした研究

でははじめに動物を対象とした研究から紹介したいと思います[2]。この実験には7週齢のウィスターラットが用いられました。糖尿病とオリゴ糖との関係を調査するために、ラットを次の3つのグループに分けられました。1つ目のグループはオリゴ糖の入っていない普通食を食べる糖尿病のラット、2つ目のグループはオリゴ糖の入った食事を食べる糖尿病のラット、3つ目のグループはオリゴ糖の入った食事を食べる糖尿病でない健康なラットです。ちなみに糖尿病のラットは、薬を使うことによってインスリンを分泌する細胞を壊すことによって人工的に作られます。これら3つのグループを作成し、5週間にわたって観察をしました。1週間目と3週間目、5週間目に血液を採集し、血糖値や中性脂肪、コレステロール値などを比較しました。その結果が次のグラフです。

グラフ:オリゴ糖の血糖値、中性脂肪、コレステロール値に及ぼす効果(出典[2]

3つのグラフは左から血糖値(Glucose)、コレステロール(Cholesterol)、中性脂肪(Triglyceride)を示してします。そして、グラフで示されている要素はそれぞれのグループを示しています。■はオリゴ糖の入っていない普通食を食べた糖尿病ラット、▲はオリゴ糖の入った食事を食べた糖尿病のラット、●はオリゴ糖の入った食事を食べた糖尿病でないラットです。またアルファベットは、異なるアルファベット同士で統計学的に有意な差が見られたことを示しています。たとえば、コレステロール(真ん中)のグラフは、1週目と3週目ではそれぞれのグループ間で有意な差は見られていませんが、5週目になると、それぞれのグループ間のすべてで有意な差が見られた、ということになります。

この結果についてそれぞれの項目を見てみると、血糖値は●<▲<■の順で高くなっていました。つまり、糖尿病ラットと健康なラットを比べた場合では、糖尿病ラットのほうが血糖値が高く、オリゴ糖を摂取した場合としなかった場合とを比べた場合では摂取しなかった場合で血糖値が高くなっていました。そしてこのような傾向は、血糖値だけでなく、中性脂肪やコレステロールにおいても同様に見られました。つまりオリゴ糖には、糖尿病の場合で高くなりやすいこれらの指標に関して、その上昇を抑える効果があり、そのことがこの研究で確かめられたのです。

人を対象とした研究

では次に、人を対象とした研究を紹介したいと思います。動物では糖尿病にとって有益な効果が見られましたが、人では果たしてどうなのでしょうか。

この研究は2000年に「Human Nutrition and Metabolism」に投稿されました。男性6人、女性4人の糖尿病患者を対象として、オリゴ糖を投与した場合の血糖値の変化を観察しました。実験では、砂糖を摂取した場合の血糖値と、オリゴ糖を摂取した場合の血糖値の両方を測定され、その結果が比較されました。それについてのグラフが次のようにまとめられています。

グラフ:オリゴ糖を摂取した場合と砂糖を摂取した場合の血糖値の比較(出典[3]

グラフの上の点は●:砂糖、○:オリゴ糖をそれぞれ示しており、摂取直後から15分後までの血糖値の変化を示しています。結果として、砂糖を摂取した場合でもオリゴ糖を摂取した場合でも、血糖値に大きな変化はありませんでした。この結果はどのように解釈すべきでしょうか。

この結果は、オリゴ糖が血糖値の代謝に影響を及ぼさない、というふうに解釈するのが正解でしょう。重症の糖尿病患者は、砂糖を摂取した場合でもその代謝が正常の行われないことが普通です。そのため、オリゴ糖を摂取した場合でも血糖値に変化はなく、その代謝系に影響を及ばさなかった。なので、糖尿病患者であっても、オリゴ糖であれば摂取しても問題を及ぼすことはない、と解釈すべきです。

まとめ

今回はオリゴ糖と糖尿病との関係について紹介しました。オリゴ糖は砂糖と比べてカロリーが低く、また血糖値にも影響を及ぼさない栄養素であることがわかりました。動物実験でも人間を対象にした実験でも概ね良い影響が見られています。血糖値が高いことなどで悩んでいる方は、オリゴ糖を試されてみてはいかがでしょうか。

参考文献

[1] Meiyo Clinic. “Diabetes”.

[2] Imaizumi, Katsumi, et al. "Effects of xylooligosaccharides on blood glucose, serum and liver lipids and cecum short-chain fatty acids in diabetic rats." Agricultural and Biological Chemistry 55.1 (1991): 199-205.

[3] Luo, Jing, et al. "Chronic consumption of short-chain fructooligosaccharides does not affect basal hepatic glucose production or insulin resistance in type 2 diabetics." The Journal of nutrition 130.6 (2000): 1572-1577.