乳児におけるオリゴ糖の便秘改善効果

成人におけるオリゴ糖の持つ便秘改善効果は実証されています。オリゴ糖を摂取することで便秘が改善されることは明らかです。しかし乳児においてはどうなのでしょうか。大人だけでなく、乳児であっても便秘になりますが、この場合でも効果はあるのでしょうか。またオリゴ糖を乳児に与えるにあたって安全面についても気になるところです。以下では、それらについて詳しく紹介していきます。

赤ちゃんに与えても大丈夫?

はじめにオリゴ糖の安全性についてご紹介していきます。いくら便秘解消に効果があるといっても副作用が生じては元も子もありません。大人にとっては安全で、副作用がほとんどないオリゴ糖ですが、これは乳児の場合にもあてはまるのでしょうか。

母乳にもオリゴ糖は含まれている[1]

一般的な食品にはほとんど含まれておらず、日常的に摂取する機会は少ないと考えられているオリゴ糖ですが、乳児の場合はほぼ毎日摂取しています。母乳の中にオリゴ糖が含まれているからです。

母乳にはかなり多くのオリゴ糖が含まれています。母乳に含まれる糖質はおよそ7%で、その80%をラクトースが、そして20%をオリゴ糖が占めてします。単純計算すると1日に700mlほどの母乳を飲む乳児の場合は10g程度のオリゴ糖を摂取しているという計算になります。

このオリゴ糖は赤ちゃんの免疫機能を高めるために働きます。赤ちゃんはオリゴ糖を分解するための消化酵素を持っていません。これは成人と同様です。そのためオリゴ糖は腸管で消化されずに大腸にまで達します。そしてそこでビフィズス菌の定着や増殖を促すのです。それにより病原菌やウイルスから身を守るための免疫システムを構築するのです。

以上のことより、オリゴ糖は日常的に摂取しているものなので、乳児にとっても安全であることがおわかりいただけたかと思います。害になるものではなく、免疫システムの構築のためにはむしろ必要なものでもありました。

虫歯などの影響は?[2]

オリゴ糖は赤ちゃんにとっても安全であるとの結論がでましたが、しかし虫歯についてはどうでしょうか。「糖」という言葉が付いていることからも分かるように、オリゴ糖は糖の一種です。糖は虫歯の原因になることが知られていますので、それを心配される方もいらっしゃることでしょう。とくに、この頃に虫歯になってしまうと、それ以降も虫歯になりやすくなるともいわれていますので、心配される気持ちもよくわかります。しかし、その心配はありません。オリゴ糖は虫歯の原因になりにくい糖なのです。

虫歯は酸が歯を溶かすことによってできます。この酸は口の中に存在している菌によって産生されます。そしてこの菌のこと虫歯菌とも呼びます。虫歯菌はグルカンを形成することによってしっかりと歯に密着し、効率的に歯を溶かしています。このグルカンのことを歯垢といい、歯磨きによって落とさなければならないものです。この歯垢の形成に糖が一役買っており、そのために糖が虫歯の原因とされるのです。

しかし、オリゴ糖は歯垢の形成に関与しない糖なので虫歯の原因にはなりません。一般的な糖、たとえば砂糖は歯垢を形成する菌のエサとなります。そのため、砂糖を摂取すると歯垢が形成されやすくなり、虫歯が発生しやすくなります。しかしオリゴ糖はその菌のエサにはなりません。そのため砂糖のように虫歯の原因にはならないのです。そのためオリゴ糖が虫歯の原因になる可能性を心配しているという方は、安心してくださって大丈夫です。

早産児へのオリゴ糖の効果

腸内環境が改善

妊娠24週~37週の間に生まれると早産児と呼ばれますが、この早産児を対象にオリゴ糖投与による効果を検討した研究があります[3]。この研究は56人の早産児を対象に行われました。対象者を2グループにわけ、片方のグループにはオリゴ糖の含まれているサンプルが、もう片方のグループにはオリゴ糖の含まれてないサンプルが与えられました。そして1週間にわたってサンプルを摂取させ、その間の糞便資料の回収を行いました。そして糞便を分析し、そこから腸内フローラの状況を観察しました。それによる腸内環境の改善効果が次のような表で示されています[3]

この表では、研究開始時(Day 1)と研究終了時(Day 7)について、オリゴ糖を与えられたグループ(FOS)と与えられなかったグループ(Placebo)の間での腸内フローラを比較しています。研究開始時においては全ての項目において有意な違いはありませんでした。しかし、研究終了時では大きな差が生まれています。特にビフィズス菌の数(Bifidobacteria)とそれを定着させた割合(Percentage)はオリゴ糖を摂取したグループで高くなっていました。また、大腸菌(E coli)と腸球菌(Enterococci)はオリゴ糖摂取により減少していました。

これらの結果は、オリゴ糖を摂取することが腸内の善玉菌を増加させ、またその定着を促し、それに加えて大腸菌や腸球菌などの悪玉菌を減少させたことを示しています。つまり、オリゴ糖摂取により腸内環境が整えられたということなのです。

排便回数も増加

また、この研究では排便回数も比較しています。それによると、オリゴ糖を与えられたグループでは1日の排便回数が平均で3.05回、与えられなかったグループでは2.3回で、この結果は統計学的に有意(p<0.001)であったとのことです。

つまり、さきほどご紹介したような腸内環境の改善効果が排便回数にも表れていたのです。排便回数は便秘状態かどうかにおける指標の1つです。この結果は、オリゴ糖摂取が乳児における便秘に効果があったことを示しています。

通常の乳児においても有効

さきほどは早産児を対象とした研究をご紹介しましたが、ここでは通常の乳児を対象とした研究を紹介します。早産児でない乳児に対してもオリゴ糖は効果を発揮します。

この研究は3~20週齢の乳児を対象に行われました[4]。対象者の数は35人です。この乳児をオリゴ糖の含まれたサンプルを与えられるグループと、標準的な治療を受けるグループとの2つにわけ、その後の便秘改善状況を比較しました。その結果が次の表です。

この表では標準的な治療を受けたグループ(SF)とオリゴ糖を与えられたグループ(NF)との間で、便秘の改善状況について比較しています。これを見ると、排便頻度(Defecation frequency)はオリゴ糖を与えられたグループで改善されているという傾向が見られました(SF:4.9回、NF:5.6回)。また、便の状態の改善(Improvement of hard to soft stools)もオリゴ糖投与により高まる傾向が見られました(SF:50%、NF:90%)。

以上の結果より、早産児だけでなく、そうでない乳児でもオリゴ糖投与が便秘の改善に効果的であるとの結論が得られました。

まとめ

今回は乳児におけるオリゴ糖の便秘改善効果についてご紹介しました。オリゴ糖は乳児にとって日常的に摂取している成分なので安全で、しかも虫歯の原因にもなりません。早産児を対象にした研究でも通常の乳児を対象にした研究でもオリゴ糖の便秘改善効果は示されました。赤ちゃんの便秘に悩んでいるという方は、一度試されてみてはいかがでしょうか。

参考文献

[1] 浦島匡, 朝隈貞樹, 福田健二. "ヒトミルクオリゴ糖の生理作用." ミルクサイエンス 56.4 (2008): 155-176.

[2] 北畑寿美雄,他. "虫歯とオリゴ糖." 澱粉科学 28.2 (1981): 142-149.

[3] Kapiki, Angeliki, et al. "The effect of a fructo-oligosaccharide supplemented formula on gut flora of preterm infants." Early human development 83.5 (2007): 335-339.

[4] Bongers, Marloes EJ, et al. "The clinical effect of a new infant formula in term infants with constipation: a double-blind, randomized cross-over trial." Nutrition journal 6.1 (2007): 1.