妊婦の便秘におけるオリゴ糖の効果

妊婦は妊娠していない時と比べて便秘になりやすいと言われています。そのため、妊娠中の様々な不快感に便秘による不快感も加わってしまいます。しかし、赤ちゃんへの状態を考えると気軽に下剤に頼ることができません。そんなときにはオリゴ糖が有効です。以下では、妊婦の便秘におけるオリゴ糖の効果や安全性などについて詳しく紹介していきます。

妊娠中はなぜ便秘になりやすいの?[1]

妊娠中は非常に便秘になりやすいと言われています。大阪府立母子保健総合医療センターによると、妊婦さんの3人に1人は便秘に悩まされているとしています[2]。妊娠中はただでさえも不快感に悩まされているのに、それに加えて便秘にもなってしまうとますます不快感が強くなってしまいます。では、なぜ妊婦さんは便秘になってしまうのでしょうか。その理由は1つではなく様々あります。

不安やストレスも便秘の原因だとされています。妊娠中というのは通常の状態とはやはり異なるため、それによる不安やストレスによって便秘になってしまうことがあるようです。その他の理由として、妊婦さんの運動不足もあります。妊婦さんは運動量が減りがちになるので、それにより腹筋を始めとした様々な筋肉が衰えてしまいます。そのために排便が困難になり、便秘になりやすくなってしまいます。

それらに加えて、妊娠によるホルモンバランスの乱れも原因になります。妊娠中はプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。これは女性ホルモンの一種です。プロゲステロンは大腸の動きを抑制する働きがあるため、それによって便秘になってしまうのです。

このように、妊娠中は便秘になりやすい要因が多く存在します。そのために実に多くの妊婦さんが便秘に悩まされることになります。とはいえ、それらの要因を取り除くことは難しいと言わざるをえません。不安やストレスを解消することを意識したり、リラクゼーションなどの気晴らしを取り入れることはできるかもしれませんが、根本的な運動不足を解消したり、ホルモンバランスを整えることは実際には不可能でしょう。そのため、便秘の解消の方法としては簡単な運動を取り入れたり、食物繊維の多い食事を摂取したりなどがありますが、オリゴ糖の摂取も科学的根拠の蓄積されている便秘の解消に効果的な方法です。

オリゴ糖摂取により便秘が改善された

妊婦さんにオリゴ糖を使用することにより、便秘が解消されたとする研究があります。この研究は30人の日本人妊婦を対象として行われました[3]。4.2gのキシロオリゴ糖を1ヶ月にわたって摂取させ、その間の排便回数などを観察しました。その結果が次のグラフです。

このグラフは、それぞれの期間における排便回数の平均値を示してします。研究を始める前は、1週間に1.1回だった排便回数が、オリゴ糖を摂取し始めた日から1週間の間では5.3回にまで増えていました。そしてこれが週を重ねるごとに、それぞれ5.9回/週、6.2回/週、6.7回/週にまで増加していました。そしてこの増加は、摂取する前と比べて統計学的に有意に増加していました。このことは、この増加が偶然ではなく、統計学的に意味のある増加であることを示してします。そしてこのような結果は便の硬さにおいても見られました。

このグラフは便の硬さについての報告をグラフ化したものです。便の状態は左からとても固い;固い;普通;柔らかい;とても柔らかいを示しています。便が硬すぎると排便が困難ですし、柔らかすぎても問題です。真ん中の3つのカテゴリ(固い;普通;柔らかい)の占める割合が高いと良いといえるでしょう。結果を見るとオリゴ糖を摂取してからの期間が長いほど便の状態が改善していました。

これらのことから、オリゴ糖は排便の回数を増加させ、便の状態を改善させていることがわかりました。つまりオリゴ糖の摂取により妊婦さんの便秘を改善できることが示されたのです。

この結果は、オリゴ糖が大腸において、善玉菌であるビフィズス菌の増加を促したことによっておこったと考えられます。ビフィズス菌は人間にとって良い働きをする菌の代表格です。便の水分量を正常にする働きや、乳酸を産生し大腸の蠕動運動を促進させる働きがあります。これらの働きによって妊婦における便秘が改善したと考えられます。

オリゴ糖の胎児への影響は?

妊婦さんがオリゴ糖を使用するにあたって特に気になる点はお腹の中の赤ちゃんについてではないでしょうか。妊娠中は赤ちゃんへの影響のためにタバコを吸ったりコーヒーを飲んだりすることは控えることとされています。また、薬についても赤ちゃんに移行する可能性がある薬は使用されません。ではオリゴ糖はどうなのでしょうか。

オリゴ糖は使用しても大丈夫

結論から申し上げると、オリゴ糖を使用してもお腹の中の赤ちゃんに影響はないと考えられています。これは現在のところオリゴ糖による影響が報告されていないためです。また、オリゴ糖は胎盤を通過しないとされていることもその理由の1つです。

お母さんと赤ちゃんの間での物質の交換は胎盤を通して行います。空気や排泄物、栄養分などが胎盤を通して相互に送りあわれます。先ほども例に出したカフェインはこの胎盤を通過するため、お母さんが摂取すると赤ちゃんにも移行してしまいます。タバコに含まれるニコチンやその他有毒物質も胎盤を容易に通過します。

しかしオリゴ糖は胎盤を通過しません[4]。これは分子量の大きさが関係していると考えられています。オリゴ糖は分子量が大きな成分なので胎盤を通過することができません。しかしブドウ糖などの小さい糖質は胎盤を通過することができます。このような理由でオリゴ糖はお腹の中の赤ちゃんに影響しないと考えられます。便秘による不快感もストレスの原因になりますので、無理せず上手にオリゴ糖を利用して下さい。

下剤の使用は慎重に

ただし、便秘を改善するために下剤を使用するという場合は注意するようにしてください。ほとんどの下剤は、短期間の使用においては胎児奇形などのリスクと関連しないとされています[5]。しかし、下剤の使用は、妊娠しているしていないにかかわらず脱水や電解質以上などのリスクがつきまといます。そのため、便秘治療におけるファースト・チョイス(第一選択肢)はオリゴ糖の使用や軽めの運動、食物繊維の多い食事を摂取するなどです。まずはこれらの処置を施し、それでもやはり良くならない場合には医師に相談したうえで下剤の使用など、次の処置を行うようにしましょう。

まとめ

今回は妊婦さんの便秘治療について、オリゴ糖の効果について紹介しました。妊婦さんは様々な理由により便秘になりやすくなっています。しかしその原因を取り除くことは容易ではありません。その場合にオリゴ糖の摂取が有効だと考えられます。実際の研究においても、オリゴ糖摂取により便秘改善作用が見られました。安全面でみても、オリゴ糖摂取による胎児への影響は現在では報告されておらず、またオリゴ糖は胎盤を通過する成分ではないため安全であると考えられています。便秘に悩んでいるという妊婦さんはぜひ試してみて下さい。

参考文献

[1] American Pregnancy Association. Pregnancy and Constipation.

[2] 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 産科. 妊娠中の便秘と痔.

[3] Tateyama, Ichiro, et al. "Effect of xylooligosaccharide intake on severe constipation in pregnant women." Journal of nutritional science and vitaminology 51.6 (2005): 445-448.

[4] 豊田長康. "胎盤の物質輸送と通過性糖, 脂質.", “周産期医学”. 28(6), p. 729-732 (1998).

[5] Trottier, Magan, Aida Erebara, and Pina Bozzo. "Treating constipation during pregnancy." Canadian Family Physician 58.8 (2012): 836-838.