オリゴ糖は虫歯予防に効果的

甘いものを食べすぎると虫歯になる。こういったことは以前からよく言われています。となると、糖と名の付くオリゴ糖も虫歯の原因になると考えるのが普通でしょう。しかし実際は、オリゴ糖は虫歯の原因にはなりません。今回はその理由や、オリゴ糖と虫歯との関係などについて詳しく紹介していきます。

虫歯の原因は?

虫歯は国民のほとんどが罹患する、いわば国民病とも言える病気です。平成26年度に行われた学校保健統計調査によりますと、12歳の児童における虫歯の本数が、平均して1本あることを報告しています[1]。昔と比べるとだんだんと少なくなってきて入るものの、依然として多くの児童が罹る疾患の1つです。

そんな虫歯の原因としては、砂糖が最有力候補としてあげられます。次のグラフを見てください。

グラフ:砂糖消費量と虫歯罹患率との関係(出典[2]

このグラフでは、国民1人あたりの砂糖消費量と、小学6年生の児童における虫歯の罹患率との関係を示しています。このグラフを見るかぎり、砂糖の消費量と虫歯の罹患率はとてもきれいな相関関係にあります。つまり、砂糖の消費量が増えると虫歯の罹患率が増えるか、虫歯の罹患率が増えると砂糖の消費量が増えるといった関係にあるのです。虫歯の罹患率が増えると砂糖の消費量が増えるとは考えにくいため、砂糖の消費が虫歯の原因になっていると考えるべきでしょう。つまり、砂糖を摂取することで虫歯になりやすくなるのです。

その理由は、砂糖が虫歯菌によって利用されるためだと考えられます。次の図を見てください。

図:虫歯の発生機構(出典[2]

この図では、虫歯の発生機構を示しています。虫歯の発生における初期段階に、砂糖が関わっているのです。S. mutansというのがいわゆる虫歯菌のことで、砂糖を利用して不溶性のグルカンを作り出すという働きがあります。この不溶性グルカンというのは、非常にネバネバした成分で、水道水で口をゆすぐ程度では落とすことができません。そのため、ブラッシングなどで落とさない限りは歯の表面や、歯と歯の隙間に存在しています。この不溶性グルカンには菌が生育しやすい状況が整っているため、これに他の細菌が付着すると、菌がだんだんと増殖していきます。そうなると、最初はただの不溶性グルカンだったのが、酸を産生し歯を溶かすグルカンに成長してしまうのです。こうしてできたグルカンがいわゆる虫歯の原因になる歯垢で、放っておくと虫歯を発生させてしまう原因になります。

図を見てもわかるように、虫歯の発生には砂糖が大きく関係しています。甘いものを食べると虫歯になるというのは迷信などでは決してないのです。砂糖を摂取することで不溶性グルカンが作られやすくなり、それから虫歯の原因となる歯垢が形成され、歯が溶けやすくなってしまうのです。

では、オリゴ糖はどうでしょうか。一般的に健康に良いとされているオリゴ糖ですが、糖と名が付くため、虫歯の原因になってしまうと考えるのは自然なことです。確かに甘みがありますし、砂糖のように虫歯の原因になってしまっても何ら不思議ではありません。もしそうならば、子どもはもちろん、大人であっても摂取をためらってしまいます。しかし心配する必要はありません。実はオリゴ糖は虫歯の原因にはなりにくい糖質なのです。このことについて、以下で詳しく紹介していきます。

オリゴ糖は虫歯の原因になりにくい

オリゴ糖は、砂糖よりも虫歯の原因になりにくい糖質です。次のグラフを見てください。

グラフ:各種糖質からのグルカンの合成(出典[2]

このグラフは砂糖やオリゴ糖に、S.mutansやLeuconostoc mesenteroidesといった細菌を作用させた場合の、グルカンの生成量を示しています。棒グラフのうち、塗りつぶされていない白の棒が可溶性グルカンを、縞模様で塗りつぶされている棒が不溶性グルカンの生成量を示しています。そして、左側3本の棒グラフがS.mutansを、右側3本の棒グラフがLeuconostoc mesenteroidesを作用させた場合のグルカン生成量を示しています。3本のグラフの内訳は、1がショ糖を除去したカップリングシュガー、つまり純粋なオリゴ糖を示しており、2はショ糖が除去されていないカップリングシュガー、3がショ糖、つまり砂糖を示しています。

グラフを見てみると、グルカン生成量の違いは一目瞭然です。1<2<3の順でグルカン生成量が多くなっています。つまり、オリゴ糖はショ糖と比べてほとんどグルカンを形成しないのです。また、乳酸の生成量についても検討が行われています。次の表をご覧ください。

表:各種糖質からの乳酸生成(出典[2]

乳酸の生成量が多いと、その糖質は酪酸発酵を受けやすい糖質であるということを示しています。つまり、虫歯予防の観点からは、乳酸生成量は少ないほうが良いと言えるでしょう。以上のことを踏まえて表を見てみると、グルコースやフルクトース、ショ糖などは多くの乳酸を生成しているのに対して、G2FやG3Fなどのオリゴ糖は乳酸をまったく生成しません。つまり、オリゴ糖は発酵を受けないのです。すなわち、虫歯予防にはとても効果的であると言えるでしょう。

以上、ここまで見てきたように、オリゴ糖は虫歯予防の観点から見ると、とても好ましい糖質であるといえます。しかし、オリゴ糖を、虫歯を予防するだけの糖質として認識するのは大変もったいないと言わざるを得ません。虫歯予防の他にも、多くの健康効果を持っているのです。次は、オリゴ糖のもつ健康効果について簡単に紹介していきます。

虫歯を予防するだけでないオリゴ糖の役割

オリゴ糖の持つ健康効果として、真っ先にあげられるのが便秘解消効果でしょう。便秘傾向の女性78人を対象にした研究では、オリゴ糖を摂取することで排便回数が増加したとの結果が得られています[3]。これはオリゴ糖が大腸において発酵を受けるためです。オリゴ糖は発酵されると、カプロン酸などの短鎖脂肪酸や、乳酸などの有機酸を産生します。こういった酸が大腸の蠕動運動を促進し、その結果として便秘が解消されるのです。

また、オリゴ糖は免疫機能を高めることが知られています。ラットを対象とした研究では、オリゴ糖を投与することで便に排泄される免疫物質(IgA)が増加したとの結果が得られています[4]。また、アレルギー性マウスを用いた場合に、そのアレルギー様症状をオリゴ糖が抑えたことが確認されています。これらの結果から、オリゴ糖が腸内フローラの状態を改善し、腸管免疫を促進した結果、アレルギーの症状を抑制したことが明らかになりました。

このように、オリゴ糖には虫歯予防の他にも多くの健康効果があります。今回取り上げたのは便秘解消と免疫機能の亢進についてのみですが、それだけではありません。ですので、オリゴ糖を摂取して得られる健康効果としては虫歯予防だけでなく、それ以外にもたくさんあるということは知っておくと良いでしょう。

まとめ

今回はオリゴ糖と虫歯予防について紹介しました。オリゴ糖は虫歯の原因となるグルカンを形成しないばかりか、発酵も受けないため酸を産生することもありません。そのため、虫歯予防の観点からは、非常に好ましい糖質ということになります。また、それだけではなく、便秘を解消する効果や免疫力を高める効果などもあります。オリゴ糖を摂取すると虫歯になるのでは?と心配されている方は安心してオリゴ糖を摂ってみてください。

参考文献

[1] 文部科学省. 学校保健統計調査.

[2] 北畑寿美雄, 他. "虫歯とオリゴ糖." 澱粉科学 28.2 (1981): 142-149.

[3] Deguchi, Yoriko, et al. "Effects of β 1-4 Galactooligosaccharides Administration on Defecation of Healthy Volunteers with Constipation Tendency." The Japanese Journal of Nutrition and Dietetics 55.1 (1997): 13-22.

[4] 佐藤岳治, 中村泰之, 小澤修. "ガラクトオリゴ糖がマウスの免疫系に与える影響." 日本栄養・食糧学会誌 61.2 (2008): 79-88.