オリゴ糖は免疫を向上させる

今回はオリゴ糖と免疫との関係を紹介します。オリゴ糖は腸内細菌叢のバランスを整えることによって、免疫機能を高める働きがあります。そしてそれによってアレルギー症状を抑制するなどの効果が得られるのです。これらのことについて、以下で詳しく紹介していきます。

腸内細菌は免疫機能を向上させる[1]

まず、腸内細菌と免疫機能の関係について紹介しておきます。免疫機能は私達が病気にならないようにするための機能ですが、その一部を腸内細菌が担っているのです。

腸内には多くの細菌が存在しています。そしてその種類は、1000種を超えるほどとも言われています。その中には、人間の体にとって有益な作用をもたらすビフィズス菌のような菌もいれば、食中毒の原因になることもある大腸菌や腸球菌といった悪い菌も存在しています。そういった細菌のほとんどは大腸に存在しており、その数は約100兆個、重量に換算するとおよそ1.5キログラムにもなります。普段はあまり意識することはありませんが、私達はこれほど多くの細菌たちと一緒に暮らしているのです。

これら腸内細菌の果たす役割には様々あります。腸内細菌たちは私たちの与り知らないところで一生懸命に働いているのです。その役割の中には、たとえばビタミンを合成する役割があります。腸内細菌によって合成されるだけの量で必要量を満たすビタミンもあるほどです。また腸内細菌が消化・吸収の補助を担う場合もあります。栄養素を効率的に消化し、吸収するための助けを行うのです。そして忘れてはならない役割として、今回取り上げている免疫機能があります。

腸内細菌が免疫機能に関与しているという証拠は、通常のマウスと、体内に菌の存在しない無菌マウスとを比較することで得られます。2匹のマウスを比較すると、パイエル板と呼ばれる免疫機能を担う組織の大きさが違うことが明らかになっています。通常のマウスのほうが大きく、無菌マウスでは小さかったのです。パイエル板とは腸内に存在しているリンパ節の集合体のことを指しており、様々な免疫機能を有しています。この組織が無菌マウスで小さくなっているということは、腸内細菌がこのパイエル板の形成などに関与しているということを示しているのです。

また腸内細菌は、パイエル板の形成に関与しているだけでなく、それ単体でも免疫能を発揮します。たとえば、一般的な乳酸菌であるビフィズス菌は、発酵によって乳酸を産生します。乳酸はその名の通り酸ですので、腸内におけるpHを低下させます。そういった環境になると増殖するのが難しくなる細菌がでてきます。たとえば大腸菌です。大腸菌は通常のpHだと問題なく増殖できても、pHが低いと増殖するのが難しくなるのです。腸内細菌の中には乳酸菌のように、それ単体で免疫機能を持った細菌がいるのです。

オリゴ糖摂取は免疫を高める

腸内細菌が免疫機能を高める働きがあることはわかりました。ではどのようにすることで腸内細菌を増やすことができるのでしょうか。その答えの1つがオリゴ糖です。

オリゴ糖はプレバイオティクスとして働く

オリゴ糖はプレバイオティクスとして働きます。プレバイオティクスというのは、腸内における乳酸菌などの善玉菌の増加に寄与する成分のことで、オリゴ糖や食物繊維などがこれに該当します。善玉菌のみを選択的に増加させるのもプレバイオティクスとしての条件の1つで、そのためオリゴ糖を摂取することで腸内の悪玉菌は増加せずに善玉菌だけを増加させることができるのです。

では、どうしてオリゴ糖は腸内細菌の増加に関係しているのでしょうか。これはオリゴ糖が腸内細菌のエサとして利用されるためです。オリゴ糖は人間の消化酵素では分解されず、そのためそのままの形で大腸にまで達します。大腸には乳酸菌などの腸内細菌が存在しており、そこでオリゴ糖が利用されるのです。その結果として善玉菌は増加し、増加した善玉菌の産生する酸によって大腸菌などの悪玉菌の増加は抑制されるのです。次の表を見てください。

表:オリゴ糖摂取による腸内細菌叢の変化(出典[2]

この表は健康な男性6名を対象に行われた研究の結果を示しています。イソマルトオリゴ糖を投与し、それによる腸内細菌叢の変化を示しています。研究開始2日前(-2)から研究終了後14日後(24)までの結果が示されています。この表で特に注目すべきなのがビフィズス菌(Bifidobacterium)の増加です。研究開始時では10.4だったのが、研究を開始して7・10日後には10.6に増加しています。しかも、この増加は統計学的に有意であったとのことでした。つまり、この研究においても、オリゴ糖を摂取することでビフィズス菌の増加を促進できたことを示しているのです。

オリゴ糖投与と感染症との関連

ここまでは次の2つのことを確認してきました:すなわち、1)腸内細菌が免疫機能に関与しているということ、2)オリゴ糖がビフィズス菌などの腸内細菌を増加させるということです。しかし実際に重要なのはオリゴ糖を摂取することで免疫機能が向上するかどうかといった点でしょう。上記2つのことが確認できても、最終的にオリゴ糖を摂取することによって免疫機能が向上していないと意味がありません。ここでは、それに着目して行われた研究を紹介したいと思います[3]

この研究は「日本栄養・食糧学会誌」に2008年に投稿された研究です。マウスを対象として、オリゴ糖を与えた場合と与えなかった場合とで、便に含まれるIgAの量を比較しています。その結果が次のグラフです。

グラフ:サンプル別のIgA量(出典[3]

このグラフでは、□:オリゴ糖を摂取しなかったグループ(コントロール)、■:オリゴ糖を摂取したグループで示されています。研究開始時では総IgA量に差は見られませんでしたが、研究を初めて2週間目になると、統計学的に有意な差(p<0.05)が見られています。つまり、オリゴ糖を摂取することで、免疫機能が向上したことが示されたのです。

また、この研究ではアレルギーに関する研究も行っています。免疫機能が正常だとアレルギーは起こりにくくなるため、それについても確認したのです。次のグラフを見てください。

グラフ:オリゴ糖のアレルギー性鼻炎症状抑制効果(出典[3]

このグラフでは、2つのアレルギー性鼻炎症状について、それぞれのマウスの症状の現れ方について検討しています。アレルギー症状は、A:くしゃみ(Sneezing)、B:鼻かき行動(Nasal rubbing)です。マウスは、アレルギー症状を誘発されなかった健康なマウス(Naive)、アレルギー症状を誘発されてオリゴ糖を与えられなかったマウス(Control)、そしてアレルギー症状を誘発されてオリゴ糖を与えられたマウス(GOS)です。このグラフでは、くしゃみにしても鼻かき行動にしてもオリゴ糖を投与することでそれを抑制できたことを示しています。また、その症状はアレルギーを誘発されなかったマウスと比べても大差ありませんでした。

まとめ

今回はオリゴ糖と免疫との関係について紹介しました。腸内細菌は免疫に関与しており、またその腸内細菌を増加させるためにはオリゴ糖の投与が有効でした。そして、オリゴ糖を投与した実際の研究でも、オリゴ糖を投与することによって免疫機能が高まり、アレルギー症状を抑制できることが示されました。オリゴ糖と免疫との関係について、理解するための参考になれば幸いです。

参考文献

[1] 上野川 修一. 腸管免疫と腸内細菌. 乳酸菌ニュース. 477.

[2] Kohmoto, Takanobu, et al. "Effect of isomalto-oligosaccharides on human fecal flora." Bifidobacteria and Microflora 7.2 (1988): 61-69.

[3] 佐藤岳治, 中村泰之, 小澤修. "ガラクトオリゴ糖がマウスの免疫系に与える影響." 日本栄養・食糧学会誌 61.2 (2008): 79-88.