オリゴ糖と骨粗しょう症との関連

今回はオリゴ糖と骨粗しょう症との関係について紹介します。一見するとオリゴ糖と骨粗しょう症との間には何ら関係がなさそうですよね。しかし実際には、オリゴ糖に骨粗しょう症を予防したり、治療したりといった効果があるのです。このことについて、以下で詳しく紹介していきます。

骨粗しょう症とは[1]

はじめに、骨粗鬆症とはなにかといった点について、症状と原因から解説していきます。

症状

骨粗しょう症は、その初期段階ではほとんど症状はありません。痛みもありませんし、不快なこともありません。しかし、症状が進行してくると少し転んだだけで簡単に骨折してしまったり、そこまでひどくなかったとしても、関節などに痛みが生じたりします。そのような症状に加えて、高齢になってから背中が曲がりやすくなったり、身長が縮んでしまったりなどの原因になります。

原因

そのような症状がある骨粗しょう症ですが、一体何が原因なのでしょうか。それには様々ありますが、カルシウムの吸収が悪かったり、摂取量が少なかったりすると骨粗しょう症になる危険性が高まります。普段意識することはありませんが、骨は絶えず代謝されています。古い骨が壊され、新しい骨が作られます。その際に血液中のカルシウム量が少ないと、たくさん骨を壊さなくてはならなかったり、新しい骨を作り出す余裕がなかったりします。そういったことが原因となって、だんだんと骨量が減っていき、骨粗しょう症になってしまうと考えられているのです。

オリゴ糖摂取と骨粗しょう症との関連

ではここからはいよいよ、オリゴ糖摂取と骨粗しょう症との関係についてご紹介していきます。オリゴ糖を摂取することで、骨粗しょう症を予防することができるのでしょうか。これに関して、閉経後の女性を対象にした研究と、青年を対象にした研究を以下で紹介していきます。

閉経後女性を対象にした研究

まずは、閉経後の女性を対象にした研究からです[2]。閉経後の女性は骨粗しょう症になるリスクが高くなっています。これは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が衰えることに関係しています。これはエストロゲンに、骨を壊してカルシウムとして血中に取り込む働き(骨吸収)を抑える作用があるためで、その分泌が少なくなる閉経後の女性においては骨粗しょう症のリスクが高くなってしまうのです。この研究では、そんな閉経後の女性をターゲットにしています。

研究は、55歳~66歳の女性、合計14人を対象として行われました。この女性たちはホルモン検査によりすでに閉経していることが確かめられています。研究はオリゴ糖を与えられるグループと与えられないグループとの2つに分けて行われました。これは、研究に参加するだけで症状が改善する効果(プラセボ効果)の影響を取り除くためです。

研究は36日間にわたって行われました。最初の9日間はそれぞれのサンプルを与えられ、その次の19日間はそれぞれのサンプルの摂取を中止しました。そして次の9日間は前回与えられたサンプルとは逆のサンプルを与えられました。すなわち、最初の9日間にオリゴ糖を与えられたグループでは最後の9日間はオリゴ糖を与えられず、最初の9日間にオリゴ糖を与えられなかったグループでは最後の9日間にオリゴ糖が与えられました。このような研究デザインを採用することで、グループ間の個人差が与える結果への影響を取り除くことができるのです。

この研究ではカルシウムの吸収率を測定しています。カルシウムをよく吸収できていれば、それが骨粗しょう症の予防や治療につながると考えられるからです。カルシウムの吸収率は、カルシウムの安定同位体を用いて行われました。安定同位体とは、人間が確認しやすいようにマーキングした物質のことで、これを経口摂取させ、尿にどのくらい排泄されたのかを確認することで、経口摂取したカルシウムの安定同位体がどの程度吸収されたのかを知ることができるのです。その結果が次のグラフです。

図:個人別のカルシウム吸収率(出典[2]

このグラフでは、オリゴ糖を摂取しなかった時(Reference)と摂取した時(TOS)とのカルシウムの吸収率(Ca absorption)を比較しています。このグラフを見る限り、オリゴ糖を摂取することでカルシウムの吸収が少なくなったのは14人中2人しかおらず、他はオリゴ糖を摂取することでカルシウムの吸収が高まっています。この研究の結果から、閉経後の女性においては、オリゴ糖を摂取することでカルシウムの吸収が高まることがわかりました。

若年者を対象とした研究

では、それ以外の対象者ではどうなのでしょうか。次は若年者を対象とした研究を紹介します[3]。これに関する研究は、学術誌「The American Journal of Clinical Nutrition」にて報告されています。年齢が9~13歳までの男女を対象として行われました。対象者を2つのグループに分け、片方のグループにはオリゴ糖を、もう片方のグループにはプラセボ薬を投与しました。研究期間は8週間にわたって行われ、研究開始時と8週間後、それと1年後に先ほど紹介した研究と同様のカルシウムの吸収試験が行われました。その結果が次の表です。

グループ別カルシウム吸収率の変化(出典[3]

  オリゴ糖グループ プラセボグループ P値
研究開始時 29.9 ± 1.4 29.4 ± 1.5 0.76
8週間後 38.5 ± 1.2 30.0 ± 1.3 <0.001
1年後 37.7 ± 2.1 31.7 ± 2.3 0.04

研究開始時には、オリゴ糖グループとプラセボグループとの間に統計学的に有意な差は見られませんでしたが(p=0.76)、研究を開始してから8週間が経過すると統計学的に有意な差が見られました(p<0.001)。しかもその差は、研究が終了してから1年経った後でも依然として見られました(p=0.04)。つまり、オリゴ糖を投与している間にカルシウム吸収が促進されたばかりか、オリゴ糖の投与が終了した後でもその効果が残っていたのです。

この結果は骨塩量にも現れていました。

表:グループ別骨塩量の変化(出典[3]

  研究開始時 変化量(1年後)
オリゴ糖グループ 1338 ± 35 245 ± 11
プラセボグループ 1256 ± 35 210 ± 102

この表は、研究開始時から1年経った後の骨塩量を比較したものです。オリゴ糖グループは245グラム、プラセボグループは210グラム増加していました。この増加量を比較したところ、統計学的に有意な差が見られました。つまり、オリゴ糖を投与することで骨塩量が増加したことを示しているのです。

以上より、オリゴ糖を投与することで閉経女性においても若年者においてもカルシウムの吸収が増加することがわかりました。ではなぜこのようなことが起こるのでしょうか。これは腸内細菌の働きによります。腸内細菌は、腸内に運ばれてきた食物を発酵し、プロピオン酸などの脂肪酸や、乳酸などの有機酸を産生します。これら酸の作用により、カルシウムの吸収が促進されるのです。

そんな腸内細菌をオリゴ糖は増加させます。オリゴ糖は腸内に存在する乳酸菌などの腸内細菌を選択的に増加させる効果があります。そのために、オリゴ糖を摂取することで、カルシウムの吸収が促進されたのです。

まとめ

今回はオリゴ糖と骨粗しょう症との関係について紹介しました。オリゴ糖を摂取することで腸内細菌が増加し、その結果としてカルシウムの吸収が促進されます。そのことが、骨粗しょう症の治療や予防にも寄与すると考えられます。

参考文献

[1] Meiyo Clinic. “Osteoporosis”.

[2] van den Heuvel, Ellen GHM, Margriet HC Schoterman, and Theo Muijs. "Transgalactooligosaccharides stimulate calcium absorption in postmenopausal women." The Journal of nutrition 130.12 (2000): 2938-2942.

[3] Abrams, Steven A., et al. "A combination of prebiotic short-and long-chain inulin-type fructans enhances calcium absorption and bone mineralization in young adolescents." The American journal of clinical nutrition 82.2 (2005): 471-476.