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オリゴ糖は過敏性腸症候群を悪化させるかも?

オリゴ糖は腸内環境を整えることで便秘改善などの健康効果を発揮します。しかしオリゴ糖を摂取することでかえって悪化する可能性がある疾患があります。その疾患の一つが過敏性腸症候群です。以下では、過敏性腸症候群とオリゴ糖との関係について詳しく紹介していきます。

過敏性腸症候群とは[1]

オリゴ糖と過敏性腸症候群との関係を紹介する前に、まずは過敏性腸症候群について紹介しておきます。あまり一般的ではない病気ですので、その症状から原因までを以下で説明していきます。

症状

過敏性腸症候群は、大腸に異常が起こることで発症します。痙攣や腹痛、膨満感、便秘、下痢などを引き起こします。症状には大きく分けて4つあり、ストレスなどによってすぐに下痢になってしまう下痢優位型(IBS-D)、慢性的に便秘の状態が続いてしまう便秘優位型(IBS-C)、下痢と便秘が交互に繰り返される交互便型(IBS-A)、より腹痛が強い疼痛優位型があります。

これらの症状は長期間にわたって継続します。症状が現れてすぐに消失し、また再度症状が現れてまた消える。このようなパターンが長期にわたって継続します。風邪やインフルエンザのように、一度症状がなくなると再発しにくい疾患とは違い、症状が波となって出現し、それが長い間続くのです。ですので、日常生活の質にも深い影響を及ぼし、学業や職業を十分に行うことができないという事態にも陥ってしまう可能性があります。

そのため、過敏性腸症候群が原因となって、うつ病などの障害を発症する可能性もあります。日常生活でも、下痢などの不安から逃れることができず、十分に日常生活を送ることが困難になり、その結果としてうつ病を発症することがあるのです。そのほかにも、慢性疲労症候群や、不安障害などを併発する場合もあります。

原因

では、そんな過敏性腸症候群の原因はなんなのでしょうか。下痢や便秘、腹痛が過敏性腸症候群の主症状ですので、大腸に腫瘍があったり、炎症が起こっていたりといったことが原因だと思われるかもしれません。しかしそうではないのです。実は、過敏性腸症候群の場合、大腸にいての見た目にわかる異常は見当たりません。神経系の異常が原因になるのです。

何らかの原因によって、大腸の動きを司っている神経に異常をきたすことで、必要以上に大腸の動きが活発になったり、または動かなくなったりすることで便秘や下痢を発生させます。また、便秘が長く続くことで疼痛を引き起こしたりもします。

そんな神経系の異常ですが、なぜこのような異常が起こってしまうのかについては、明確原因はわかっていません。ストレスや生活習慣などが原因になるかもしれないとは言われていますが、確実な原因だとは言い切れないのです。そのほか、トイレを我慢しなければいけない、といった強迫観念や、また下痢になってしまったらどうしよう、といった不安が原因になるかもしれないとも言われています。しかし、これらも神経系の異常をもたらす原因の説の1つに過ぎないのです。

そのため治療に関しても、これを行うことで100%完治するといった類のものはありません。ストレスの原因を解消したり、生活習慣を改めたりといったことで、それが原因を解消することになる場合もあります。これによっても症状が改善しない場合は症状を緩和させるための対症療法を行います。大腸の動きや便の水分量を調整するための薬を投与する場合があります。

オリゴ糖と過敏性腸症候群との関係について

ここからはオリゴ糖と過敏性腸症候群との関係についてご紹介します。オリゴ糖は便秘を改善するのに有効な糖質の1つです。しかし、オリゴ糖を摂取した際の大腸内の状態は、実は過敏性腸症候群の症状が発生させている大腸内の状態と似ているのです。そのため、オリゴ糖が過敏性腸症候群を悪化させるのでは?と示唆されています。

オリゴ糖は過敏性腸症候群の改善に寄与しない

このことに関する研究が、2000年に「American Society for Clinical Nutrition」にて報告されました[2]。当時より人間に与えるオリゴ糖の健康効果については注目されていましたが、良い効果があるのだから当然副作用も当然あるのではないか?とも考えられていました。その考えからこの研究が開始されたわけです。

研究は18~70歳の過敏性腸症候群に罹患している患者を対象として行われました。ヘモグロビン値やC-反応性たんぱく質、血清アルカリホスファターゼなどの血液検査の結果が正常で、大腸における手術歴がなく、また消化管における重度の疾患にかかったことがない人が研究対象となりました。また、アルコール依存がなかったり、鎮痛剤や下剤の常用者でなかったりといったことも選定基準になりました。つまり、ある程度健康な過敏性腸症候群の患者が対象として選ばれたわけです。

研究を始める前の2週間に、対象者は10グラムのプラセボ薬(偽薬)を与えられました。これにはオリゴ糖は含まれず、これまでの食習慣をリセットすることを目的として投与されました。その後、12週間に渡って研究が行われました。対象者を2つのグループに分け、片方のグループには10グラムのプラセボ薬を与え、もう片方のグループには最初の2週間には10グラムのオリゴ糖を、次の10週間には20グラムのオリゴ糖が与えられました。研究期間中に、患者の状態などの経過を観察しました。その結果が次の表です。

表:ベースライン時からの過敏性腸症候群症状スコアの変化(出典[2]

  オリゴ糖投与グループ プラセボグループ
2週目 0.39 ± 2.48 0.95 ± 2.27 0.57 ± 0.51
4週目 0.30 ± 3.28 1.55 ± 2.593 1.25 ± 0.7
6週目 0.51 ± 3.93 1.97 ± 2.764 1.46 ± 0.8
8週目 1.29 ± 3.67 1.55 ± 2.58 0.26 ± 0.77
12週目 1.82 ± 3.94 2.35 ± 3.34 0.53 ± 0.89
終了後 1.09 ± 3.94 1.84 ± 3.44 0.75 ± 0.89

この表はベースライン時と比較した、オリゴ糖もしくはプラセボ薬を投与され始めてから2・4・6・8・10・12週間目とその後の、過敏性腸症候群スコアの変化と、グループ間の差を示した表です。スコアは高い方が良い状態であると判断されます。これを見ると、プラセボグループでは、週を追うごとにスコアが改善しています。これがいわゆるプラセボ効果で、研究に参加するだけで症状が改善していくこを指します。オリゴ糖投与グループにおいてもプラセボ効果は生じていると考えられるため、プラセボグループと同程度はスコアが改善するはずです。

ところがグループ間の差を見る限り、同程度どころか、6週目までは週を追うごとにグループ間の差は開いてしまっています。この結果は、オリゴ糖が過敏性腸症候群の症状を改善しておらず、むしろ悪化させているかもしれないことを示唆しています。なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。その理由はオリゴ糖の大腸内での挙動によります。オリゴ糖は大腸に入ると水素を発生させ、その結果として大腸の動きを活発にさせるのです。これが、過敏性腸症候群の際の状態と似ているため、オリゴ糖を摂取することで過敏性腸症候群が悪化したのだと考えられています。ところで、12週目になるとその差は縮まってはいます。しかしこれは、体がオリゴ糖に慣れたためで、決してオリゴ糖の効果が出始めたと考えるべきではないでしょう。

ただし、過敏性腸症候群を発症させるわけではない

上記で紹介した研究では、オリゴ糖の投与が過敏性腸症候群を悪化させたことが示されました。しかし、これはあくまでも過敏性腸症候群の患者を対象にした場合です。つまり、健康な人を対象にした研究ではないのです。ですので、健康な人がオリゴ糖を摂取した場合に過敏性腸症候群を発症させるわけではないということを最後に付け加えておきます。

まとめ

今回はオリゴ糖と過敏性腸症候群との関係についてご紹介しました。オリゴ糖の摂取した際の大腸の動きと、過敏性腸症候群の症状である大腸の動きが似ています。そのため、オリゴ糖が過敏性腸症候群を悪化させる可能性があります。過敏性腸症候群の患者がオリゴ糖を摂取する際は、慎重になる必要があるでしょう。ただし、健康な方がオリゴ糖を摂取した場合に過敏性腸症候群になるのではないことは頭に入れておいてください。

参考文献

[1] Mayo Clinic. “Irritable bowel syndrome” .

[2] Olesen, Merete, and Eivind Gudmand-Høyer. "Efficacy, safety, and tolerability of fructooligosaccharides in the treatment of irritable bowel syndrome." The American journal of clinical nutrition 72.6 (2000): 1570-1575.