オリゴ糖と下痢との関連

下痢は便秘と並ぶ消化器症状の代表で、多くの人々を悩ませています。便秘と同様、非常に不快な症状ですし、程度によっては体力を非常に消耗します。そんな下痢ですが、実はオリゴ糖に下痢を改善する効果があるとされています。以下では、オリゴ糖と下痢との関連について紹介していきます。

なぜ下痢になるのか

そもそもなぜ下痢になるのでしょうか。下痢は場合によっては脱水をまねくため、それによる悪影響も生じます。下痢は以下のような原因によって発生します[1]

ウイルス

たとえば、ノロウイルスなどのウイルスによっても下痢は生じます。冬になると増加するノロウイルスですが、成人にとっても非常に辛い下痢症をもたらします。その他、サイトメガロウイルスやロタウイルスなども下痢の原因となるウイルスです。特に、ロタウイルスは小児の急性下痢症の一般的な原因です。

細菌・寄生虫

細菌や寄生虫による下痢は主に発展途上国で問題となります。O157の原因となる大腸菌、や細菌性赤痢の原因となる赤痢菌などによって汚染された水を飲むことで発症します。発展途上国を訪れた旅行者が現地の水を飲むことによっても発症することが知られています。

医薬品

意外に思われるかもしれませんが、抗生物質などの医薬品を摂取した際にも下痢が発生することがあります。抗生物質は、腸内に存在する微生物を殺してしまいます。この際には良い菌も悪い菌も殺してしまうため、腸内に存在する細菌のバランスが崩れてしまうのです。それによって下痢が発生することがあります。その他、がんの薬や、胃を保護するための薬でも下痢を発生することがあります。

乳糖不耐症

牛乳を飲んでお腹を下しやすい人は、乳糖不耐症だと言えるでしょう。ラクトースを分解するための酵素を持っていない人では、ラクトースが分解されずに腸に達します。ラクトースは、腸内における浸透圧を上げてしまうため、お腹が緩くなってしまいます。このラクターゼの活性は加齢によって減少していくため、高齢になると牛乳などのラクトースが含まれる食品を摂取してお腹を下すリスクが高くなります。

腸内環境

腸内環境も下痢を発生させる原因なります。これは、上で見たとおり、抗生物質の使用により腸内環境が乱れ、下痢になってしまうことからも窺えます。また、腸内環境の状態が良いと免疫機能が強化されるため、ウイルスや細菌などによる下痢の発生をある程度予防することができると考えられます。そのため、下痢を予防するためには、腸内環境の状態を良くすることも大切なのです。

オリゴ糖の摂取で下痢は改善される

オリゴ糖を摂取することで、下痢は改善されます。これは、オリゴ糖を摂取することで腸内環境が整うことに起因しています。オリゴ糖は、ビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれる細菌に選択的に利用されます。その結果として、善玉菌が増加し、腸内環境の状態が良い方向に向かいます。そのため、オリゴ糖を摂取することで下痢が改善されるのです。

オリゴ糖摂取と下痢との関連に関する研究が、1995年に発表されています。この研究は10-24ヶ月齢の小児を対象に行われました[2]。小児を2つのグループに分け、一方のグループにはオリゴ糖の入っていない飲料を、もう片方のグループにはフラクトオリゴ糖の入った飲料を与えました。研究は16週間にわたって行われ、この期間中に下痢が起こった場合、研究実施施設である病院に出向くように言われ、その際の便の状態などが記録されました。その結果として、下痢を起こした人数を以下の表に示します。

表:下痢の発生人数(出典[2]

項目 介入グループ
(132人)
コントロールグループ
(135人)
1回だけ下痢をした 40人 45人
複数回下痢をした 3人 11人

下痢の発生人数については、介入グループ(フラクトオリゴ糖を与えられたグループ)の方が少ない傾向が見られました。この結果からだけでも、オリゴ糖に下痢の発生を予防する効果があることがうかがえます。これに加えて、下痢が生じていた期間についても調査されています。次の表を見てください。

表:下痢の発生していた期間(出典[2]

項目 介入グループ コントロールグループ
下痢を発生した人数 43人 56人
平均下痢発生期間 3.91日 4.88日

下痢を発生した人数についても介入グループの方が少なく、それに加えて下痢になっていた期間についても、介入グループの方が短かったという結果が得られました。この期間の差は、統計学的に有意(この結果が偶然である可能性がきわめて低い)でもありました。以上の結果より、オリゴ糖が下痢の発生を抑え、かつ下痢にかかっている期間を短くすることに貢献していると考えられます。

子どもの抗生物質関連下痢症の改善にも

また、腸内環境を整えることで、子どもの抗生物質関連下痢症の改善に役立つとされています。抗生物質関連下痢症は、抗生物質による治療を受けた患者の5-30%が発症すると言われている症状です[3]。先にも示したとおり、この抗生物質関連下痢症は、抗生物質が腸内における正常な腸内環境を破壊することによって起こります。体にとって有益な働きをする菌をも殺してしまい、下痢を起こすような菌の増殖を可能にしてしまうことで、下痢を発生させるのです。

そんな抗生物質関連下痢症を予防するために、抗生物質と一緒にプロバイオティクス(腸内環境を整える作用のある物質)を摂取することが有効であるとの研究があります[4]。この研究は2006年に行われており、手法には様々な研究の結果を統計学的に統合するメタアナリシスと呼ばれる手法が用いられています。メタアナリシスは科学的根拠のレベルとして非常に優れており、信頼性の高い研究手法とされています。

この研究では、こどもを対象に、抗生物質関連下痢症とプロバイオティクスとの関連を検討した6つの研究の結果を統合しました。合計の対象者数は766人にものぼります。この研究によると、偽薬を与えられたグループが抗生物質関連下痢症を発生するリスクが28.5%であったの似対し、プロバイオティクスを与えられたグループの発生リスクは11.9%でした。この結果は、プロバイオティクスを与えられたグループが抗生物質関連下痢症を発生するリスクが、偽薬を与えられたグループの0.44倍であることも示しています。

この結果は、オリゴ糖を摂取することでも抗生物質関連下痢症の発生を抑制することができることを示しています。このメタアナリシスでは、乳酸菌などのプロバイオティクスを研究対象としましたが、オリゴ糖を摂取することでも腸内環境は整います。オリゴ糖が腸内における乳酸菌の増加を促進するためです。そのため、抗生物質関連下痢症を予防するためには、オリゴ糖の摂取も有効である可能性が高いと考えられるでしょう。

まとめ

今回は、オリゴ糖の摂取と下痢との関連について紹介しました。下痢の原因には様々ありますが、腸内環境が乱れていることも下痢の発生原因となります。そのため、ビフィズス菌を摂取したり、オリゴ糖を摂取したりして腸内環境を整えることでも下痢を予防することができます。もちろん、便秘の改善にもオリゴ糖は有効ですので、それらの症状に困っているという方は、一度オリゴ糖を試してみてはいかがでしょうか。

参考文献

[1] Mayo Clinic. Diarrhea.

[2] Dohnalek, Margaret Ione Halpin, Karin Margaret Ostrom, and Milo Duane Hilty. "Use of indigestible oligosaccharides to prevent gastrointestinal infections and reduce duration of diarrhea in humans." U.S. Patent No. 5,827,526. 27 Oct. 1998.

[3] Barbut, Frédéric, and Jean Luc Meynard. "Managing antibiotic associated diarrhoea: Probiotics may help in prevention." British Medical Journal 324.7350 (2002): 1345-1347.

[4] Szajewska, Hania, Marek Ruszczyński, and Andrzej Radzikowski. "Probiotics in the prevention of antibiotic-associated diarrhea in children: a meta-analysis of randomized controlled trials." The Journal of pediatrics 149.3 (2006): 367-372.