オリゴ糖は大腸ガンを予防する

大腸ガンは、ガンの一般的なタイプでありながら、死にも直結することがある怖い病気です。そんな大腸ガンを、オリゴ糖を摂取することで予防できるかもしれないとの研究結果があります。以下では、そんな大腸ガンとオリゴ糖との関係について、詳しく紹介していきます。

大腸ガンとは[1]

オリゴ糖と大腸ガンとの関係を見ていく前に、大腸ガンについてある程度知っておくとは、理解する上で役に立つでしょう。はじめに大腸ガンについて、症状と原因といった側面から紹介しておきます。

症状

まずは大腸ガンの症状からです。大腸ガンにかかってしまうと、以下で紹介する主要な3つの症状が現れるとされています。1つ目は血便。便に血が交じるようになります。これは大腸からの出血によります。2つ目は排便回数の増加です。大腸ガンになる前よりトイレの回数が増えるそうです。そして3つ目は下腹部の痛みや不快感です。食事を食べるごとにこれが引き起こされるため、食欲が減退し、意図しない体重減少を引き起こすことがあるようです。

原因

そんな大腸ガンですが、最も大きな原因は加齢だとされています。大腸ガン患者の実に10人に9人が60歳以上です。つまり、年齢が高いと大腸ガンにかかるリスクも高いことを示しています。また、肥満も原因の1つです。高脂肪食が大腸に負担をかけてしまうためで、大腸ガンを予防するためには、食事から摂取する脂肪分を少なくすることが望まれます。他にも運動不足やアルコール、喫煙などが大腸ガンの原因としてあげられます。

オリゴ糖の大腸ガン抑制効果について

ここまでは大腸ガンの症状や原因について紹介してきました。ではここからは、オリゴ糖のもつ大腸がん抑制効果について紹介していきます。はじめに動物を対象として行われた実験の結果を紹介し、次に人間を対象として行われた研究を紹介します。

動物を対象にした実験

はじめに、動物を対象にした実験について紹介します。この実験は「Carcinogenesis」において報告されています。アゾキシメタンという薬剤によって強制的に大腸がんにかかった状態にされたラットを対象としており、そのラットを、オリゴ糖を投与されるグループと、されないコントロール食グループ、またオリゴ糖と同様に効果を発揮するイヌリンを摂取するグループとに分けて、大腸がんの経過を観察しました。その結果が次の表です。

表:オリゴ糖とイヌリンのACFに及ぼす効果(出典[2]

  大腸における総ACF数 p値
コントロール食グループ 120 ± 28  
オリゴ糖グループ 92 ± 28 0.024
イヌリングループ 78 ± 37 0.006

この表では、与えられたサンプル別の、大腸において形成されたAFCの数が示されています。AFCというのは大腸がんの前ガン状態のことを示しており、放置するとガンになってしまう状態のことをいいます。つまり、AFCの数はできるだけ少ないほうが良いということになります。形成されたAFCの数が多いということは、そのサンプルが投与されたアゾキシメタンに対して抵抗できていないことを示しているのです。逆にAFCが低く抑えられていると、そのサンプルがガンの形成を抑制したことを意味しています。

以上のことを踏まえて先ほどの表を見てみると、オリゴ糖を投与されなかったコントロール食グループでは、平均して120のAFCが形成されていました。それに対して、オリゴ糖を投与されたグループとイヌリンを投与されたグループでは、それぞれ92と78しかAFCが形成されていませんでした。そしてその結果をコントロール食グループと比較した場合の検定結果がp値として表の右側に表記されており、オリゴ糖グループもイヌリングループも有意となっていました(オリゴ糖グループ:0.024、イヌリングループ:0.006)。つまり、この差は統計学的に見ても意味のあるものだったのです。

この研究の結果は、オリゴ糖やイヌリンが大腸ガンの形成を抑制していることを示しています。では果たしてどのようなメカニズムでオリゴ糖やイヌリンは大腸ガンの形成を抑制したのでしょうか。その理由の1つとして、ビフィズス菌が産生する酸が関係していることが考えられています。

オリゴ糖やイヌリンを摂取すると、腸内細菌の増加が促進されます。これは、これらの成分が胃や小腸などで消化されず、そのままの形で大腸にまで達し、そこで腸内細菌のエサとなるためです。そして、増加する菌の中でも、特にビフィズス菌の数が増加します。増加したビフィズス菌は発酵により乳酸を産生します。この乳酸が大腸内のpHを低下させ、その結果としてAFCの形成を阻害したと考えられるのです。

以上より、ラットを対象とした動物実験では、オリゴ糖に大腸ガンの予防効果が見られることがわかりました。では、これは人間に対しても同様に効果が見られるのでしょうか。動物で効果が見られたからといって、それがそのまま人間にも適用できるかはわかりません。それを明らかにするためには、人間を対象として実験するしかないのです。次は人間を対象として、オリゴ糖の効果を検証した研究を紹介します。

人間を対象にした研究

人間を対象にした研究においても、動物実験よりはその効果はやや緩やかなものの、一定の効果が見られていいます。これに関する研究は、2006年に学術誌「THE JOUNAL OF NUTRITION」に報告されました[3]。この研究は34名の健康な男性を対象として行われました。オリゴ糖を投与することで、腸内における乳酸の産生が増加するかどうかを検証しました。もし乳酸が増加していれば、その結果としてACFの形成を抑制することができるため、人間においてもオリゴ糖が大腸ガン抑制効果をもたらすことを意味します。

この研究では、34名の対象者を2つのグループに分け、片方のグループにはオリゴ糖を投与し、もう片方のグループには投与しませんでした。これを2週間続け、その後2週間研究を中断しました。そしてその後に、今度はグループを入れ替えてまた2週間実験しました。すなわち、最初の2週間にオリゴ糖を与えられたグループは、最後の2週間はオリゴ糖が与えられず、オリゴ糖を与えられなかったグループにはオリゴ糖が与えられました。こうすることで、研究のグループ間の差を解消することができ、より多くの被験者で実験できるようになるのです。

そして、その結果が次のグラフです。

グラフ:オリゴ糖の乳酸菌やムチン排泄に及ぼす効果(出典[3]

このグラフでは、便中への乳酸とムチン排泄のグループ別平均値が示されています。ムチンというと馴染みのない成分ですが、腸管での免疫に関与しており、大腸ガンの予防にも関係している成分なのです。グラフ軸の左側がオリゴ糖を摂取しなかった際(Placebo)の平均値、右側がオリゴ糖を摂取した際の平均値(FOS)です。乳酸(Lactate)とムチン(Mucin)の排泄量を比較しています。グラフを見ると、乳酸の排泄もムチンの排泄もオリゴ糖を摂取することで増加しています。つまり、オリゴ糖を摂取することでビフィズス菌が増加し、その結果として乳酸菌の産生が増え、また腸管免疫も強化されることでムチン排泄も増加したと考えられます。

まとめ

今回は、大腸ガンの予防におけるオリゴ糖の効果を検証しました。動物を対象にした研究でも人間を対象にした研究でも、同様にオリゴ糖が大腸ガンを予防する効果を持つことが示されました。大腸ガンは脂肪の多い食事などによってリスクがあがるとされます。普段の食生活に不安を持っている方は試されてみてはいかがでしょうか。

参考文献

[1] NHS Choices. “Bowel cancer”.

[2] Reddy, Bandaru S., Rachid Hamid, and C. V. Rao. "Effect of dietary oligofructose and inulin on colonic preneoplastic aberrant crypt foci inhibition." Carcinogenesis 18.7 (1997): 1371-1374.

[3] Ten Bruggencate, Sandra JM, et al. "Dietary fructooligosaccharides affect intestinal barrier function in healthy men." The Journal of nutrition 136.1 (2006): 70-74.