オリゴ糖はアトピーを改善する

アトピーは非常に辛い症状をもたらす病気の1つですが、その発生に腸内細菌叢のバランスが関係しているとされています。そのために、腸内細菌叢を整える働きのあるオリゴ糖のアトピー予防効果について注目が集まっています。今回は、オリゴ糖とアトピーとの関係について詳しく紹介していきます。

アトピーについて

症状[1]

アトピーとは、生まれながらにして皮膚が過敏な状態(先天性過敏症)を指す言葉で、それによって引き起こされる湿疹や炎症のことを「アトピー性皮膚炎」といいます。アトピーの人は、そうでない人と比べて皮膚が薄く、そのためにかゆみや乾燥、ひび割れなどが発生します。また、何らかの刺激(引っ掻くなど)を受けることで、場合によっては痛みが現れたりします。

体全体にこれらの症状が発生する場合もありますが、手や肘の裏側に発生するのが一般的です。子どもの場合だと顔や皮膚にできることもあります。これらの場所は非常に人目につく場所ですので、子どもの場合だとこれがいじめの原因になったりもします。

アトピーの症状は非常に辛いものです。起きている時も寝ている時も、これらの症状に襲われることになります。子どもですと気が散って勉強を一生懸命頑張ることができないかもしれませんし、大人であっても仕事に十分に集中できないかもしれません。また寝ている時に起こるかゆみは、睡眠を妨げてしまうため、不眠の原因になったりもします。これが非常に辛く、それによっても日中の集中力の低下が引き起こされます。

アトピーが引き金となって、他の感染症を引き起こすことがあります。これは、アトピーによって痒みが発生した場所を引っ掻くことで、傷となり、そこから病原菌が侵入してしまうためです。皮膚というのは非常に強いバリア機能を持っており、正常な状態だと私たちを感染症から守ってくれますが、傷がある状態だと病原菌の侵入を簡単に許してしまいます。細菌やウイルスが傷口から侵入することで傷口が腫れてしまったり、高熱が出てしまったりすることもあります。

このように、場合によっては重症化してしまうアトピーですが、次はなぜこのようなアトピーが発生するのが、その原因を紹介したいと思います。

原因

アトピーの原因の1つは遺伝です[2]。両親から受け継いだ遺伝子のために、アトピーになってしまうリスクが高まってしまうのです。実際に、両親もしくは片方の親がアトピーだったり、また兄弟にアトピーの人がいたりする場合は、自身がアトピーを発症する可能性が高まってしまうことがわかっています。もちろん、先天的にアトピーであっても、環境によってはそれが気にならない場合もあります。刺激の強いシャンプーを控えていたり、乾燥状態を避けていたりすることで、アトピーの症状を抑えることができます。しかし、遺伝によってアトピーを発症しやすくなるのは間違いありません。

遺伝の他には、「腸内細菌叢」がアトピーの原因であるとも言われています。腸内細菌叢というのは、腸内に存在する細菌の群れのことで、このバランスがアトピーの発症に関係しているのでは?と言われているのです。これについての研究が、学術誌「Journal of allergy and clinical immunology」に投稿されています[3]。この研究は、アトピー性疾患の有病率が高いとされるスウェーデンとエストニアで行われました。これらの国の新生児を対象として、2年間の追跡調査が行われています。生まれてから5~6日と1・3・6・12ヶ月後に糞便を採取し、その中に含まれている細菌を分析しました。また、調査期間中のアトピー発生状況もあわせて調査しました。そうすることで、アトピーの発生の有無と、腸内細菌との関係を分析することができるのです。

この研究では2国合計で44人を調査しており、そのうち18人がアトピーを発症しました。その18人と、アトピーを発症しなかった残りの26人の腸内細菌叢を比較したのです。その結果、アトピーを発症した新生児と、発症しなかった新生児とでは、腸内細菌叢のバランスに違いが見られることがわかりました。アトピーを発症した新生児では、腸球菌と呼ばれる、いわゆる悪玉菌が多く、善玉菌であるビフィズス菌の数が少なかったのです。そのため、このような腸内細菌叢のバランスの違いが、アトピーの発症に影響を及ぼしたのではないかと考えられるのです。

腸内細菌叢については多くの研究が行われており、健康に大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。腸内細菌叢を整えることで、たとえば免疫力を高めて感染症にかかりにくくなる効果や、肥満を防ぐ効果などがあるとされています。それらの効果に加えて、アトピーを防ぐ効果があるかもしれないことがこの研究で示唆されたのです。では、腸内細菌叢はどのようにすることで整えることができるのでしょうか。その答えの1つとして、「オリゴ糖」があります。

アトピーとオリゴ糖との関連

オリゴ糖は善玉菌を選択的に増加させます。悪玉菌には利用されずに善玉菌のみに利用され、その増加を促すのです。その結果として、腸内細菌叢が改善され、アトピーの発症を抑制します。このように、オリゴ糖がアトピーを改善することのメカニズムは明らかになりましたが、実際でも果たしてこれほどうまくいくのでしょうか。

このことを、新生児を対象に実証した研究があります[4]。この研究は2006年に学術誌「Archives of disease in childhood」で報告されました。アトピーのリスクのある新生児、259名を対象に行われた研究で、アトピーとオリゴ糖との関係を調査しました。プラセボ効果(実際には効果がない薬でも、それを与えられるだけで症状が改善される効果)による研究への影響を抑えるために、乳児をオリゴ糖が与えられるグループと与えられないグループとに分けて調査が行われました。オリゴ糖を与えられるグループには、100mlのミルク中に0.8グラムのオリゴ糖を、与えられないグループにはマルチデキストリン(デンプンの分解産物)が与えられました。もちろんマルチデキストリンには、腸内環境を整えるといった効果はありません。この処置は、6ヶ月間にわたって行われました。

最終的には、オリゴ糖を与えられたグループの102人、与えられなかったグループの104人が研究を終了しました。そして、オリゴ糖を与えられたグループの10人が、与えられなかったグループの24人がアトピーを発症しました。この結果をグラフで示すと次のようになります。

図:オリゴ糖を与えられたグループと与えられなかったグループとのアトピーの累積発生率(出典[4]

このグラフでは、調査期間(6ヶ月)におけるアトピーの累積発生率が示されています。エラーバーはその発生率の95%信頼区間です。この結果を見る限り、オリゴ糖を与えられたグループ(○)は、プラセボを与えられたグループ(●)よりも発生率が低くなっていました。そして、この割合の差は統計学的に見ても有意でした(p=0.014)。このことは、オリゴ糖を摂取することでアトピーの発生を抑えることができたことを示しています。

このようになった理由は、先のメカニズムでも説明した通り、オリゴ糖が腸内細菌叢を刺激し、その結果として免疫能力が高まったためだと考えられます。オリゴ糖を投与することでアトピーの発症を完全に抑えることはできませんが、予防策の1つとして、勧められるべきものになるでしょう。

まとめ

今回は、オリゴ糖とアトピーとの関係について紹介しました。アトピーは非常につらい症状をもたらす病気で、その原因は主に遺伝によるものです。しかし、腸内細菌叢のバランスがアトピー発生の原因になる場合もあります。実際、アトピーを発生した乳児では、発生しなかった乳児よりも腸内細菌叢のバランスが乱れていました。そのため、腸内細菌叢のバランスを整えることのできるオリゴ糖が、アトピーの予防に有効ではないかと考えられ、研究が実施されました。その結果、たしかにオリゴ糖はアトピーの予防に有効でした。アトピー予防のための選択肢として、オリゴ糖を加えていただければと思っています。

参考文献

[1] NHS Choices.” Atopic eczema - Symptoms”.

[2] NHS Choices. ”Atopic eczema - Causes”.

[3] Björkstén, Bengt, et al. "Allergy development and the intestinal microflora during the first year of life." Journal of allergy and clinical immunology 108.4 (2001): 516-520.

[4] Moro, Guido, et al. "A mixture of prebiotic oligosaccharides reduces the incidence of atopic dermatitis during the first six months of age." Archives of disease in childhood 91.10 (2006): 814-819.