オリゴ糖の安全性について

便秘解消などの有益な効果を持つオリゴ糖ですが、そのような健康に関する効果についてだけでなく、その安全性についても気になるという方も多いのではないでしょうか。たとえば、便秘を解消するつもりで摂取しても逆に下痢になってしまっては、私たちにとって有益だとはとても言えなくなります。今回はそんなオリゴ糖を摂取する上で気になる安全性について紹介していきます。

日常生活におけるオリゴ糖の消費について

意外に思われるかもしれませんが、私たちは普段の食生活においてオリゴ糖を摂取しています。もちろん量については多少の違いはありますが、多くの方にオリゴ糖を摂取する機会があります。たとえば、バナナにもオリゴ糖は含まれていますし、パンに使われる小麦にもオリゴ糖が含まれています。つまりオリゴ糖は、私たちにとって日常的に摂取する機会のない珍しい栄養素ではなく、普段から摂取している身近な栄養素なのです。

もっというと、私たちは赤ちゃんの時にもオリゴ糖を摂取しています。これは母乳にたくさんのオリゴ糖が含まれているためです[1]。母乳に含まれる主要な糖質はラクトース(乳糖)ですが、その他の糖質としてオリゴ糖も多く含まれています。その量は1Lの母乳中だと、およそ10-20グラムにもなるほどの多くの量です。

つまり、私たちは赤ちゃんの時も含めて、今まで多くのオリゴ糖を摂取してきているのです。このことを、私たちはオリゴ糖の「喫食実績」がある、と表現します。喫食実績という概念は非常に重要で、たとえば消費者庁が公表している「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の中で、「喫食実績により、安全性を説明できる」場合にそれを安全性の根拠とできる旨を記載しています[2]。つまり、今まで食べてきて特に重要な問題が起きていないから安全だと言えますよ、ということなのですね。

この点からみてもオリゴ糖は十分に安全であると言えます。ですが、これだけではまだ安全性については十分ではないと感じる方もいらっしゃることでしょう。日常的に摂取している量では安全でも、それ以上摂取した場合の安全性については分かりませんよね。以下では「量」の観点からオリゴ糖の安全性について紹介していきます。

オリゴ糖摂取量の目安

まずはオリゴ糖摂取量の目安をご紹介したいと思います。以下の表をご覧ください。

表:オリゴ糖の一日目安摂取量(出典[3]

オリゴ糖の種類 一日摂取目安量
フラクトオリゴ糖 3g~8g
乳果オリゴ糖 2g~8g
ガラクトオリゴ糖 2g~5g
キシロオリゴ糖 1g~3g
イソマルトオリゴ糖 10g

これは、消費者庁が公表している「特定保健用食品(規格基準型)制度における規格基準」に記載されているオリゴ糖の目安摂取量です。この目安量は、この量を摂取することで健康に関する十分な効果を得ることができ、また安全性についても確保されている摂取量として設定されています。ですので、オリゴ糖を摂取する場合はこの摂取量の範囲で摂取するようにすることが推奨されます。

摂取量の上限はどのくらい?

では摂取量の上限はどのくらいなのでしょうか。さきほどのオリゴ糖の摂取量の範囲であれば副作用などがあらわれず、安全であることがわかりましたが、たとえば、間違えて倍量を摂取してしまったような場合でも安全なのでしょうか。医師から処方されるような薬の場合は倍の量摂取した場合に副作用が生じる場合もあります。オリゴ糖も処方薬のように大量に摂取した場合に副作用を引き起こすのでしょうか。このような点について紹介していきます。

1度に摂取する場合

オリゴ糖を1度に大量に摂取した場合は下痢などの副作用が生じる場合があります。しかしその量はかなり多く、目安量の倍量程度を摂取したくらいではとうてい摂取できない量です。

このことに関する研究が日本人女性を対象として行われています[3]。オリゴ糖の副作用(特に下痢)を正確に測定するため、対象者たちは試験開始2-3日前からオリゴ糖や、牛乳などのその他下痢の原因になりそうな食品の摂取をしないように指導されました。研究の当日にはガラクトオリゴ糖を45グラムか60グラムを朝食または昼食の2時間前後に摂取するように指導され、そしてそれによる下痢の有無を記録させました。この研究では60グラムの摂取を14人が、45グラムの摂取を8人の対象者が行いました。

その結果として、60グラムを摂取したものでは14人中9人が、45グラムを摂取したものでは8人中3人が下痢を発生させました。このことから、オリゴ糖を一括で大量に摂取した場合には下痢を発生させることがわかりました。

ただし、この60グラムや45グラムはかなり多い量であることには注意しなければなりません。先で紹介したガラクトオリゴ糖の1日目安摂取量は2~5グラムです。これを仮に5グラムとして計算すると60グラムは12倍、45グラムは9倍となり、この計算だけでもかなりの量であることがわかるかと思います。ですので、摂取量を少し間違えたぐらいではとうてい摂取できない量なのです。

分割摂取の場合

また、これだけ大量のオリゴ糖でも、分割して摂取した場合には下痢は生じませんでした。先の研究と同じ対象者に、今度はそれぞれの量のオリゴ糖を分割して摂取させました。1日に2回、もしくは3回に分割して摂取させたのです。その結果、対象者全員で下痢が生じなかったのです。つまり、大量のオリゴ糖であっても分割して摂取した場合は副作用が生じないということが分かりました。

オリゴ糖の最大無作用量

また、この研究ではオリゴ糖の最大無作用量についても検討しています。最大無作用量というのは作用の生じ無い最大の量という意味で、下痢などの副作用が生じなかった最も多い摂取量のことを指しています。つまり、この量未満の摂取量であれば、理論上副作用が生じないということになります。

この量を体重1キログラムあたり0.80グラムとしています。たとえば、体重が50キログラムの人の場合、1日あたり40グラムがオリゴ糖の最大無作用量ということになります。この量よりも少なければ、摂取しても下痢が生じないと考えられます。

ただし、この研究は若い健康な女性を対象として行われていることに注意しなければなりません。ですので、高齢の方の場合や、健康に不安のある方の場合はこの限りでない場合もあります。そのため必要量以上に摂取することを避けなければならないのは当然のことです。

まとめ

今回はオリゴ糖の安全性についてご紹介しました。オリゴ糖は日常的に摂取している栄養素で、母乳にも含まれている栄養素のため赤ちゃんでも喫食経験があります。そのため、このことからでもオリゴ糖は安全性の高い栄養素であると言えます。また、目安摂取量の何倍ものオリゴ糖を摂取した場合では下痢が生じましたが、それほどの量であっても分けて摂取した場合には下痢が生じませんでした。このことからもオリゴ糖の安全性が確認された結果となりました。結論としては、オリゴ糖の目安摂取量を守っていればなんの心配もなく、その目安量の倍量を摂取したくらいでは副作用は生じない、ということになります。オリゴ糖は安全性の高い栄養素ですので、便秘などの症状に悩んでいる方は気軽に取り入れてみると良いでしょう。

参考文献

[1] 北岡本光. "ヒトミルクオリゴ糖によるビフィズス菌増殖促進作用の分子機構." ミルクサイエンス 61.2 (2012): 115-124.

[2] 消費者庁.” 機能性表示食品の届出等に関するガイドライン”.

[3] 奥恒行, 他. "ヒトにおける難消化性オリゴ糖・ガラクトシルスクロースの一括摂取と分割摂取の一過性下痢誘発に及ぼす影響ならびにその許容量." 日本栄養・食糧学会誌 52.4 (1999): 201-207.